商標権侵害を助長するドメイン運用に対する弊所の基本指針

― ドメイン名登録事業者(レジストラ)に求められる責任と決断 ―

1.ドメイン不正利用がもたらす本質的問題

フィッシングサイトや偽装サイトの問題は、個人情報の窃取という側面から語られることが多い。しかし実務の現場では、ドメイン名そのものが企業の商標を直接利用し、商標権侵害行為を構成している事案が少なくない。

これは単なる技術的トラブルではなく、企業が長年にわたり築き上げてきた信用・ブランド価値を根底から毀損する、極めて深刻な知的財産権侵害である。

当事務所は、これまで国内外の被害企業から正式な依頼を受け、ドメイン名を利用したこの種の不正行為について、継続的に対応してきた。

2.レジストラの立場は本当に「中立」か

ドメイン名を登録・管理する事業者(以下「レジストラ」という)は、インターネットインフラを支える存在として、一般に中立的なサービス提供者と位置付けられている。

しかし、そのレジストラが提供するドメイン名が、明確な商標権侵害行為や詐欺行為に利用されていることを認識しながら、なお登録・運用を継続する場合、その立場は単なる中立者に留まらない。

少なくとも法的には、

  • 不法行為の幇助
  • 損害拡大への関与

と評価され得るリスクを内包する。

特に、当該行為が日本の商標法に基づく侵害行為であり、かつ是正要請が繰り返し行われている状況においては、「技術的サービス提供者である」という説明だけでは足りない局面が生じ得る。

3.是正要請を受けた後の責任

国際的なインターネット環境においても、各国・地域の知的財産権が尊重されるべきことは言うまでもない。

レジストラが、商標権侵害の可能性について具体的かつ合理的な根拠を示した通知を受けた後は、

  • 事実関係の調査
  • 登録者への確認・是正要求
  • 必要に応じたドメインの一時停止(サスペンド)

といった対応を検討することは、道義的配慮にとどまらず、自らの法的リスクを管理するためにも不可欠である。

対応を先送りすることは、結果的に被害の拡大を許容したと評価されかねない。

4.当事務所の基本姿勢

当事務所は、ドメイン名を利用した商標権侵害に直面する被害者の利益を最優先とする。

そのため、以下の方針を一貫して採っている。

  • 商標法その他関連法規に基づく侵害事実の整理と明確化
  • 段階的かつ合理的な是正要請
  • 侵害状態が解消されない場合には、より踏み込んだ法的手段の検討

重要なのは、対応の目的は制裁ではなく、侵害状態の速やかな解消であるという点である。
適切な対応がなされる限り、問題はそれ以上拡大しない。

5.結語:レジストラに問われているもの

レジストラは、単なるドメイン販売事業者ではない。
その判断一つで、商標権侵害や詐欺行為の被害拡大を防ぐことも、結果的に助長してしまうこともある。

今、レジストラに求められているのは、

  • 利益と法的リスクを冷静に比較した判断
  • 公正で安全なインターネット環境の維持に対する自覚

である。

当事務所は、被害者の代理人として、その対応を注視しつつ、今後も必要な法的対応を粛々と継続していく。