パリ優先権の主張を伴う日本出願における「新規性喪失の例外」
多くの外国出願人は、本国でグレースピリオド内に最初の出願をしていれば、その後に日本へ出願しても日本の新規性喪失の例外を利用できると考えがちである。しかし、その理解は危険である。日本法のもとでは、問題となる期限要件は、日本で適用される制度ごとに満たされなければならない。意匠については、日本の意匠登録出願が新規性喪失日から12か月以内にされ、かつ所定の意思表示及び証明書提出が行われることが必要である。
したがって、米国意匠特許出願を適時に行っていても、それだけで日本が確保されるわけではない。米国出願自体が新規性喪失日後速やかに行われていたとしても、日本の意匠出願が遅れれば、日本における意匠の新規性喪失の例外を利用できなくなる可能性がある。実務的には、日本の意匠実務では、「新規性喪失日から12か月」と「基礎出願日から6か月」という二重の期限確認が必要となる。
これに対し、日本の特許実務は異なる。パリ条約上、特許の優先期間は12か月である。また、特許法30条に関するJPOの運用では、「公開日から1年以内に出願されたか」を判断するにあたり、通常のパリ優先出願とPCT国際出願とが区別されている。通常のパリ優先出願では、基準となるのは日本出願日である。他方、PCT国際出願では、国際出願日が基準となる。
この違いは結論を左右し得る。最初に通常の外国特許出願を行い、その後パリ優先権を主張して日本に出願する場合、日本の新規性喪失の例外は、日本出願日そのものが新規性喪失日から12か月以内に入っていなければ利用できない可能性がある。
米国出願人は、design patent という米国でなじみのある概念に引きずられて、日本でも意匠と特許が同様に扱われると考えてはならない。日本の意匠出願については、先行する米国意匠特許出願があっても、日本で新規性喪失の例外の12か月以内とパリ優先期間6か月以内の双方を満たして出願する必要がある。他方、日本の特許出願では分析が異なり、PCT出願であれば国際出願日が基準日となるため、実質的な救済余地が生じる。
SNS、YouTube、展示会、又は早期のローンチキャンペーン等で製品を公開する企業にとって、これは単なる技術的論点ではない。期限を徒過すれば、日本での保護可能性そのものを失い得る。最も安全な原則は単純である。公開が生じたら、日本は別問題として直ちに検討し、しかも日本の意匠と日本の特許をそれぞれ分けて検討すべきである。