On Sale Bar Novelty in US Patent Practice (米国特許法102(a)(1)の販売の解釈)
昨年(2017年)の米国特許に関する判決で注目されているものは、裁判地に関するTC-Hertland v. Kraft Foods Group Brands LLCのケース(米国国内企業の所在地は法人設立地のみを意味すると判断した)と、IPRの合憲性を争ったOil Stats Energy Services, LLC v. Greene’s Energy Group, LLC のケース(米国最高裁がIPRの合憲性を審理するため事件を受理した事案)、その他消尽(Exhaustion)について争われたImpression Products v. Lexmark Internationalのケース(国際消尽を我が国のように留保を認めることなく容認した事案)などがあるが、特許出願実務にもっとも直接的に影響するのは、下記の事件であろう。On-Sale Bar(販売による新規性喪失)が争われた事案である。
CAFC(米国巡回控訴裁判所)は、2017年5月1日、販売による新規性喪失には発明が公開されていることが必要であると判断した地裁判決を覆し、上記における「販売の申し出」には、製品の販売予約契約が含まれると判示した。すなわち、米国特許法においては、特許出願前に、特許出願人が、顧客との間で将来製品を販売することを確約する契約を締結すれば、その事実をもって新規性を喪失する。
従前の解釈
“On sale” in pre-AIA 102(b) pre-AIA 102(b)の「販売」
An inventor’s own prior commercial use, albeit kept secret, may constitute a public use or sale under 102(b). Woodland Trust v. Flowetree Nursery, Inc. (CAFC 1998).
発明者自身の商業的な利用は、秘密のままであっても102(b)の公用又は販売になり得る。
少なくとも米国では、販売により発明が新規性を喪失するために、発明内容それ自体の公開が常に必要とされるわけではない。
CAFCの判決
Helsinn Healthcare S.A. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc. (CAFC2017)
Interpretation of “On sale” in pre-AIA 102(b)
The invention does not have to be disclosed to the public for the on sale bar.
The on sale par is applied if a product is
(i) subject to a commercial offer for sale and (ii) ready for patenting.
(販売により発明が新規性を喪失するためには、発明が公開される必要はなく、製品が(i)販売の申し出の対象になっており、かつ、(ii)特許取得の準備ができていれば足りる。)
(私見)
我が国の特許法では、特許出願前に販売の申し出を行った事実が公表されたとしても、新規性喪失事由となることはないであろう。したがって、このような事実があっても、日本国特許出願においては影響しないと考えられる。グレースピリオド以前に日本出願を行い、日本出願を基礎に優先権主張出願して米国出願を行った場合、米国出願における有効出願日(effective filing date)は優先権主張日となるはずであるので、グレースピリオド以前であれば救済される可能性は高いと考えられる。
いずれにせよ、社内における知財部門が存在感を発揮し、経営部門・営業部門・技術部門等との連携をとりつつ必要な情報を常に共有すること、社内全体の知財の知識と意識を高めること、そして、何より、発明が生まれたら速やかに特許出願を行える仕組みを整えること。知的財産権の保護・活用を図る上で、これに勝る方策はない。
USC102(a)(1) (post-AIA)
A person shall be entitled to a patent unless-
(1) the claimed invention was patented, described in a printed publication, or in public use, on sale, or otherwise available to the public before the effective filing date of the claimed invention
米国特許法102条(a)(1)
何人も、次の事情がある場合を除き、特許を受けることができる。
(1) クレームされた発明が、当該クレームされた発明に係る有効出願日前に、特許されていた、印刷刊行物に記載されていた、又は、公然使用、販売その他の形で公衆の利用に供されていたこと
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