事業者視点における災害への備え
このたび、地域防災の必要性から防災士の資格試験を取得することになった1。資格取得を通じて学んだ内容は、地震、風水害、火災、避難、備蓄、地域防災など多岐にわたる。防災というと、家庭や地域における備えを思い浮かべることが多いが、災害への備えは、事業者にとっても重要な課題である。
特に、小規模事業者や士業事務所等では、専任部門を設置できる大規模組織とは異なり、限られた人員と設備の中で、業務の停止時間を最小限にとどめて重要な事業を継続しなければならない。
当事務所のような知的財産権を扱う代理業務では、特許、商標、意匠その他の手続について、多くの法定期限が存在する。また、業務上取り扱う情報には、重要な技術情報、営業情報、個人情報などが含まれる。そのため、災害への備えは、単なる備蓄や避難の問題にとどまらず、期限管理、情報管理、通信手段、データ保全、代替的な業務手段の確保とも密接に関係する。
災害への対応では、日々の備えと、実際に事象が発生した際の対応の双方が重要である。平時から、備蓄品、連絡手段、避難経路、非常用電源、重要情報へのアクセス方法、代替的な業務手段などを準備しておかなければ、いざという時に適切に対応することは難しい。
一方で、準備しているだけでも十分ではない。実際に事象が発生した際には、その時点の状況を確認し、優先順位を判断し、準備していた手段を適切に使う必要がある。備えは、実際に使えて初めて意味を持つ。
情報管理の場面では、バックアップは単にデータを保存しているだけでは足りない。必要なときに復元できてこそ、バックアップとして意味を持つ。非常用電源、連絡手段、避難経路、代替的な業務手段なども同様であり、用意しているだけではなく、必要なときに実際に使える状態でなければならない。
そのためには、平時からの確認や訓練が重要である。実際に使ってみると、保管場所が分かりにくい、電源容量が足りない、通信手段が限定されている、連絡先が更新されていない、代替手順が分かりにくい、といった問題に気づくことがある。これらは、災害が発生してからでは対応が難しい。平時に確認しておくこと自体が、重要な防災対策である。もちろん、言うは易く行うは難しであり、当事務所でも試行錯誤の連続であるが、それでも、できることから順番に対処し続けて今日に至っている。
なお、災害時の避難判断や警戒情報等については、自治体、気象庁、消防庁等の公式情報を確認することが重要であるため、本ブログではこれらについては重点を置かない。本ブログでは、事業継続や情報管理など、事業者視点で考えるべき災害への備えを中心に取り上げる。特に、平時からの備えや、災害発生時に必要となる基本的な考え方について、実務的な観点から当事務所の取り組みの一部を紹介していきたい。
- 防災士資格は事前送付される研修テキスト付属の予習と事前課題(当日提出)と2日間の講習(2日目に試験あり)により取得でき、2026年4月末時点で全国に36万人以上いるという。民間資格であり特定の権限等が付与される資格ではないが、防災に対する知識・技能を効率よく学習でき、資格取得後は地域の防災を支える専門的存在としての活躍が期待されている。事業者の視点からBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を考えるうえでも有益であると思う。 ↩︎