パテントマップ

パテントマップの概要

パテントマップとは、特許情報を整理、分析、加工して図面、グラフ、表などで表したものをいいます。パテントマップでは、主に目的のものが読み易くなるように工夫されています。

パテントマップは、次の2つに大きく分類できます。

1、統計型(データ型)

特許情報の書誌事項などを用いて統計的に解析し、グラフなどで表現します。主に100件以上の大量の特許情報を扱います。

2、リスト型(内容型)

それぞれの特許情報に記載された技術内容を個別に解析・整理して作成します。主に数十件程の特許情報を扱います。リスト型では、例えば、データマイニングを用いて、主に以下4つの指標、

  1. 発明本質抽出性(請求項における限定度合いを示す)
  2. 発明展開性(請求項の展開:上位概念→下位概念等の度合いを示す)
  3. 実施可能担保性(発明の詳細な説明における記述詳細度を示す)
  4. 強靭性(事前の調査を十分に実施したかどうかを示す)

をそれぞれ算出し、特許価値を評価しているものがあります。

データマイニング(Data Mining、データからの知識発掘)とは、大規模なデータベースから発見されたパターンやルールを知識のベースとして蓄積・学習し、新しい知識を発見・学習する手法またはプロセスをいいます。また、リスト型では、特定の特許請求の範囲の各構成要素に分類して特許価値を評価しているものもあります。

統計型パテントマップの種類

当事務所にて作成可能な統計型パテントマップについて説明します。なお、ある特定の目的で技術や企業等を調査し収集した特許情報の集合を、以下、「母集合」といいます。統計型のパテントマップでは、この母集合をもとにパテントマップを作成するため、当然ながら母集合の決め方や大きさ等は重要となります。

統計型パテントマップには、基本的なものとして、ランキングマップ、シェアマップ、時系列マップ、マトリクスマップ、コリレイションマップ、ニューエントリ・リタイアリマップ、ポートフォリオマップ、グロスレイトマップ、ユニークデータマップ、コンパラマップ、サイテーションマップの11種類あります。

1、ランキングマップ

ランキングマップは、母集合に存在する特許情報の観点(分類[IPC、title_lightblueFI、Fターム]、出願人、発明者、キーワード等)のデータ(以下、特許情報の観点のデータを単に「データ」といいます。)を件数の多い(又は、少ない)順に並べたものです。

ランキングマップでは、母集合における各データの重みを把握することができます。具体的には、母集合で研究開発に力を入れている出願人、研究開発(⇔未開拓)分野、各出願人の得意(⇔不得意)分野等を把握することができます。ランキングマップでは、主に縦・横棒グラフ又は折れ線グラフを用います。

図1.ランキングマップ

ランキングマップ

目的

  • 技術開発の進展状況をキーワードについてランキングで見る
  • 技術開発の進展状況を出願人についてランキングで見る
  • 技術開発の進展状況を発明者についてランキングで見る
  • 技術開発の進展状況を分類数で見る
  • 多くのメーカがしのぎを削っている分野を見る
  • 多くの技術者がしのぎを削っている分野を見る
  • 多くの技術分野へ手を広げている出願人を見る、など

2、シェアマップ

シェアマップは、母集合に存在するデータについてその占める割合を比率で示したものです。各データの比率は、母集合全体や母集合内の任意のデータに対してのものです。シェアマップでは、ランキングマップと同様に各データの重みを把握することができますが、さらに、母集合内のデータを限定することで、各データの比較を容易にすることができます。

ランキングマップやシェアマップでは、一般的に時間的な変化は無視されていますが、母集団を、例えば、年毎に準備することで、時間的な変化も読み取ることができます。シェアマップでは、主に円グラフを用います。

図2.シェアマップ

シェアマップ

目的

  • 技術の占有率を見る
  • 技術開発の優位状況を分類等で見る
  • 出願人の占有率を見る
  • 発明者の占有率を見る、など

3、時系列マップ

時系列マップは、母集合においてデータを時系列に表示したものです。時系列マップでは、データの時間的変化(推移)を把握することができます。時系列マップでは、主に折れ線グラフ、バブルグラフ(バブルチャート)又はレーダーグラフ(レーダーチャート)を用います。

バブルグラフでは、さらにシェアマップのように各円内に比率を表示すると、各データの時間的変化も読み取ることができます。

レーダーグラフは、比較対照する項目のデータの変化をバランス感覚で見るものです。レーダーグラフは、具体的に、比較対象の項目を円周上に配置して、時系列毎に星型(単集計)やクモの巣型(累積集計)の線で表示したものです。レーダーグラフでは、比較対象の項目の進展バランスを把握することができます。具体的には、特定出願人の特定技術の開発進展状況等を把握することができます。

図3.時系列マップ

時系列マップ

目的

  • 技術分野の開発の進展状況を見る
  • 出願人指定技術開発動向を出願件数で見る
  • 発明者の開発の進展状況を見る
  • 発明者指定技術開発動向を出願件数で見る
  • 分類指定技術開発進展状況をキーワード数で見る
  • 分類指定技術開発進展状況を発明者人口で見る
  • 分類指定技術開発動向を出願人数で見る、など

4、マトリクスマップ

マトリクスマップは、母集合において主に2つの観点(行列)に属するデータを仕分け整理したものです。マトリクスマップでは、行列のマス目(セル)の中に何をどのように入れるか、行列に何をどのように設定するのか、を考慮する必要があります。

特に、キーワードを用いてマトリクスマップを作成する場合、行列に並べるキーワードの観点を統一することが重要です。例えば、キーワードの観点は、テンペスト分析(TEMPEST)で用いられる、材料(Materials)、用途(Uses)、動力(Energy)、構造(Structure)、時間(Time)の5つのどれかで統一します。

また、キーワードの観点は、課題系観点4種類(目的[Purpose]、製品[Product]、カテゴリー[Category]、種類[Kinds])、解決手段系観点4種類(物質[Materials]、構成[Structure]、処理[Treatment]、機能[Function])、結果系観点4種類(効果[Effect]、特質[Property]、用途[Uses]、差異[Difference])のどれかで統一してもよいです。

マトリクスマップでは、行列のどのマス目にどのくらい集合離散しているかを把握することができます。具体的には、母集合における技術開発の状況を分析することができます。マトリクスマップでは、主にバブルグラフを用います。

図4.マトリクスマップ

マトリクスマップ

目的

  • 技術と技術の相関関係を見る
  • 共同出願関係の有無と件数を見る
  • 出願人の技術展開・技術範囲を見る
  • 技術分野の相関する技術へのメーカの参入状況を見る、など

5、コリレイションマップ

コリレイションマップは、母集合において2つの観点(主、副)の相関関係の高い(低い)順に観点(副)を並べたものです。具体的に、主に2つの観点(主、副)間の相関関係を、観点(主)に対する観点(副)の割合(%)として求め、その割合の高い順に並べます。コリレイションマップは、大きく分けて、分類相関マップ、出願人相関マップ、発明者相関マップ、キーワード相関マップの4種類あります。

(a)分類相関マップ

第一発明情報(主)と第二発明情報(副)との間に存在する関係を見るものです。

(b)出願人相関マップ

共同出願人のランキングを見るものです。

(c)発明者相関マップ

共同発明者のランキングを見るものです。

(d)キーワード相関マップ

あるキーワード(主)を特定し、クレームや要約中にそのキーワード(主)の他に含まれるキーワード(副)のランキングを見るものです。

コリレイションマップでは、母集合において特定の観点に対する重要な観点を把握することができます。この重要な観点をさらに用いることにより、漏れの少ない正確な調査や分析を行うことができます。コリレイションマップでは、主に縦・横棒グラフ又は折れ線グラフを用います。

図5.コリレイションマップ

コリレイションマップ

目的

  • 同一項目(技術、出願人、発明者)の関わりを見る、など

6、ニューエントリ・リタイアリマップ

ニューエントリ・リタイアリマップは、出願人、発明者、分類又はキーワード等に焦点を当てて、主にある技術開発への新規参入(出現)やその撤退(消失)の実態を見るものです。ニューエントリ・リタイアリマップでは、技術開発の変革の実態を把握することができます。ニューエントリ・リタイアリマップでは、主に横棒グラフ又は密度グラフを用います。

図6.ニューエントリ・リタイアリマップ

ニューエントリ・リタイアリマップ

目的

  • 新規技術分野が現れるのを見る
  • 新規投入された技術者が現れるのを見る
  • 分類で新規技術、参入技術を見る
  • 陳腐化した技術分野を見る
  • 撤退出願人の時期を見る
  • 発明者等の撤退状況を見る、など

7、ポートフォリオマップ

ポートフォリオマップは、母集合において主に技術のライフサイクル(誕生、成長、発展、成熟、衰退の過程)を検証するものです。ポートフォリオマップでは、技術開発の進展状況がライフサイクルのどの時点にあるのか推測することができます。ポートフォリオマップでは、主にバブルグラフを用います。

図7.ポートフォリオマップ

ポートフォリオマップ

目的

  • 技術の伸びをライフサイクル、伸び率、構成比、伸び比で見る、など

8、グロスレイトマップ

グロスレイトマップは、母集合において特定期間のデータを出願件数等の成長(伸び)率の大きい(又は、小さい)順に並べたものです。グロスレイトマップでは、成長の著しい技術を見出すことができます。グロスレイトマップでは、主に横棒グラフを用います。

図8.グロスレイトマップ

グロスレイトマップ

目的

  • 高成長してきた出願人を見る
  • 盛んに開発されている技術分野を見る
  • 盛んに開発している技術者を見る、など

9、ユニークデータマップ

ユニークデータマップは、母集合においてユニーク(唯一な)データを件数の多い(又は、少ない)順に並べたものです。ユニークデータマップでは、特定の出願人や発明者だけが行っている技術を見出すことができます。ユニークデータマップでは、主に縦・横棒グラフ又は折れ線グラフを用いる。

図9.ユニークデータマップ

ユニークデータマップ

目的

  • 特定の対象における技術(キーワード、IPC等)または固有な表現等を見る、など

10、コンパラマップ

コンパラマップは、母集合において特定の2つのデータを比較して表示したものです。指定した項目を縦軸に表示し、特定の2つのデータで比較します。コンパラマップでは、特定の出願人や発明者の間で技術項目等の優劣を把握することができます。コンパラマップでは、縦・横棒グラフ又は折れ線グラフを用います。

図10.コンパラマップ

コンパラマップ

目的

  • 指定の出願人、発明者等の技術等を比較・対照して見る、など

11、サイテーションマップ

サイテーションマップは、母集合において特許情報と引用情報や被引用情報とのつながりを視覚化したものです。サイテーションマップでは、その技術分野の先導的な技術や重要な技術を見出すことができます。サイテーションマップでは、主にパテントチャートを用います。

図11.サイテーションマップ

サイテーションマップ

目的

  • 参考文献や経過情報の引用文献などから、特許同士の引用・被引用関係を洗い出して特許同士のつながりを見出す、など

参考資料

  1. 技術分野別特許マップ「機械6 焼却炉技術」の「特許マップとは」
  2. パテントマップの全知識、発行所:(株)パテントテック社

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