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計画的偶発性理論

キャリア形成に関して、従来は明確な目標を設定し、そこに至る道筋を計画的にたどることが理想とされてきた。しかし現実には、予期しない出来事や偶然の出会いが転機となり、人生の方向を大きく変えることが少なくない。

「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」は、このような偶然を恐れるのではなく、積極的に活用してキャリアの可能性を広げていこうとする考え方である。スタンフォード大学のクランボルツ教授らによって提唱された。私自身にとっては母校の教授から教わった考え方の1つである。

偶然を活かすための五つのスキル

理論では、偶然をチャンスに変えるために次の五つの態度が重要とされている。

  1. 好奇心 ― 新しいことに関心を持ち、学び続ける姿勢
  2. 持続性 ― 困難に直面しても粘り強く取り組む姿勢
  3. 柔軟性 ― 予想外の状況に応じて方向転換できる力
  4. 楽観性 ― 偶然の出来事を前向きに解釈する心構え
  5. 冒険心 ― 不確実性を受け入れて一歩踏み出す勇気

これらの姿勢を持つことで、偶然の出来事は単なるハプニングではなく、成長と発展のきっかけとなる。考えて見れば、これらのスキルはキャリア形成にとどまらず、世紀の大発明を次々と生み出す人々、新規事業を次々と興して発展させられる人々、閉塞した状態を打破して新たな風を吹き込む人々の特徴とも共通するように思う。

自らの振り返りと今後への示唆

振り返れば、自身のこれまでのキャリアの歩みも、計画した通りに進んできたわけではない。新しい技術との出会い、想定外の依頼、人との縁。その一つひとつが次の挑戦につながり、結果的に現在の業務や役割を形作ってきた。

偶然は、待っていれば訪れるものではない。好奇心を持ち、柔軟に対応し、リスクを恐れずに一歩踏み出してこそ、偶然は意味を持つ。

この考え方は、今後キャリアを積み重ねていく方々にとっても参考になるかもしれない。将来を完全に計画し尽くす必要はない。むしろ予期せぬ出来事を歓迎し、そこから新しい可能性を引き出していくことが、長いキャリアをより一層豊かにするのではないだろうか。