音声は商標登録できるのか――AIディープフェイク対策と日本の商標実務

生成AIにより、人の声や画像を本人と見分けにくいほど再現できるようになっている。米国では著名人の音声や画像について商標出願が行われたとの報道もあり、AIディープフェイク対策として商標制度の活用が注目される。

では、日本の商標法上、人の声や肖像・画像的要素を商標として保護することはできるか。

日本でも平成27(2015)年改正により、音商標等の「新しいタイプの商標」が登録対象となっている。このため、人の声は音商標として登録対象となり得るほか、肖像や画像的要素も、図形商標や動き商標等として構成できる場合には保護対象となり得る。

もっとも、音声や肖像であれば何でも登録できるわけではない。商標登録の前提として、指定商品・役務との関係で使用又は使用意思が必要であり、単に第三者の模倣を防ぐ目的だけでは足りない。また、自他商品・役務識別力も必要であり、自然音やありふれた音、単なる有名人の声といったものは、第一にこの自他商品の識別力が問題となる。

さらに、他人の氏名や肖像等を含む場合には、人格権保護について規定した商標法第4条第1項第8号等も問題となる。

権利行使の場面でも、単に似ているだけでは足りず、出所表示や推薦・提携関係を示すような商標的使用態様であるかが重要となる。AI生成音声や画像が、本人又は正規の事業者による広告や公式サービスであるかのように用いられる場合には、商標権侵害の主張を検討しやすいが、単なる類似だけでは対応には限界がある。

したがって、適切な対象と使用態様を前提に権利化できれば、商標権は有効な手段となり得る。しかし、音声や肖像・画像的要素については、識別力、使用意思、他人の権利との関係、商標的使用態様といった複数の要素が絡むため、単に「防御的に出願する」という発想だけでは十分ではない。

特にAIディープフェイク対策として活用するのであれば、どのような商品・役務について、どのような使用態様を想定するのかを含め、出願前に十分な検討を行うことが重要である。

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(参考)
新しいタイプの商標の保護制度(特許庁)

音商標の登録事例(特許庁)